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巨大IT企業のデジタルサービスは使いやすく、多くの企業や消費者に受け入れられてきた。
だが、一部サービスへの依存が高まることで、ひとたびそのサービスに障害が起これば多大な影響が生じるリスクを抱えている。
日本時間7月19日に世界各地で発生したシステム障害は、そんな現状に対する警鐘であり、デジタル社会の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにしたといえる。
システム障害は米IT大手マイクロソフト(MS)の基本ソフト(OS)であるウィンドウズ搭載のシステムで発生した。米サイバーセキュリティー企業クラウドストライクのソフト「ファルコン」の更新プログラムにあったバグ(不具合)が原因だった。
MSによると、ウィンドウズを搭載する電子端末のうち、推定で850万台がシステム障害の影響があったとしている。運輸や金融などの基幹システムが打撃を受けるなど、影響は世界各地に及んだ。病院や行政サービスにも支障が生じた。
中でも航空分野への影響が大きく、航空情報サイト「フライトアウェア」によると、世界で4万便超が遅延し、5千便以上が欠航を余儀なくされたという。日本でも格安航空会社(LCC)ジェットスター・ジャパンで欠航が相次ぐなど影響が広がった。
今回のシステム障害は、一部のITサービスに依存するリスクを露呈した。
デジタル社会では使い勝手のいい一部のITサービスの寡占が進みやすい。システム障害の原因となったファルコンもサイバー攻撃を警戒する企業や政府機関などの採用が進む。パソコンなどの端末側の異常を常時監視する機能を持ち、世界に3万近くの顧客を抱えている。
クラウドストライクに限らず、世界的に高いシェアを持つIT企業は、その責任の重さを自覚し、自社サービスが大規模障害を起こさないよう細心の注意を払わなければならない。
顧客側も万一の際の代替手段を考えておくべきだ。完全な代替は無理にしても、データのバックアップや、システムの二重化など不測の事態に備えてできることはある。そうした一つ一つの積み重ねが、デジタル社会における危機管理の強化につながるはずだ。
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2024年7月23日付産経新聞【主張】を転載しています